2017年、戦績的には若干の伸び悩みを見せていた錦織圭。
今年最後のグランドスラムである全米オープンでの巻き返しが期待されていた矢先、突然ケガによる今期残りシーズン全ての欠場を発表しました。
ケガの詳細や経緯、また復帰時期はいつごろになる見込みなのか?
今後の錦織に関して詳しく解説したいと思います。
錦織のケガの経緯と症状について
今回、錦織の2017年残りシーズン欠場の原因となったのは右手首のケガです。
右利きである錦織にとっては当然プレーに直接的な影響を与える箇所であり、すでに今年、同じ右手首の故障により大会途中で棄権した経緯もありました。
痛みと付き合いながら、ある意味ここまで騙し騙しツアーを回っていたのかもしれませんが、過去の故障と今回のケガが関連付いたものなのかは分かりません。
では今回のケガについて、経緯や症状、今後の方針などをまとめてみていくことにしましょう。
以下は錦織陣営からリリースされた今回のケガに関するコメントをまとめた内容です。
・全米オープン前哨戦である「ウエスタン・アンド・サザン・オープン」大会に挑む為、開催地の米シンシナティで錦織はトレーニングしていた。
・トレーニングでサーブを打った瞬間、右手首に弾けるような音を聞いた
・すぐさま病院に直行、MRIなどで検査を行う
・メジャーリーガーなどを数多く診ている手首治療のスペシャリストからも診察を受ける
・さらに他のスペシャリストの元でもセカンドオピニオンを実施
・全てを総合して出した最終的な結論は「右手首腱(尺側手根伸筋腱)の裂傷」(腱に裂け目がある)
・現時点では手術を行わない選択を取っている(ギブスをはめている)
・腫れが引いた後に、今後の処置や治療法を決める
・2017年残りのツアーはすべて欠場し、2018年に万全を期せるように備える
以上が今回の右手首のケガの主な概要です。
「弾ける音を聞いた」との部分だけを見ても、相当な重症だったことは想像に難しくありません。
手首のケガの原因について
テニスに限らずスポーツ選手のケガの原因については、容易に特定できるものではありません。
もちろん再発などとなれば原因の特定も割と絞り込みやすくはありますが、原因が前もってわかっているのであれば、そもそもケガする前に本人が予防しているはず。
従って、錦織のケガについてもあくまで予測の範囲内とはなりますが、ケガの箇所が「テニス選手特有の個所」でもありますので今回は原因にも少し触れておきましょう。
テニス選手特有と言いましたが、話は単純。
回転をかけながらボールを打ち込むテニス競技の場合、手首は特に酷使される箇所なのです。野球選手で言うところの肩や肘と似たようなイメージでしょうか。
また錦織の場合、小柄な体格であることもあってか、体全体のひねりをうまく使いながらパワーをボールに伝達させるフォームも少なからず影響しているかもしれません。
体全体を100%使えるのであればこのフォームは特段問題アリとも言えませんが、錦織は慢性的に脇腹や股関節など、体の各所に故障の不安を抱えている選手。他の箇所の痛みをかばうため、無意識的に手首を通常より使ってプレーしていた影響も考えられます。
もとより手首自体、以前から故障しがちな箇所でもありましたし、その故障により手首の特定部分、つまり今回怪我した箇所に多くの負担がかかっていたのか。
少なくとも「使い過ぎ」がケガの一因となっている可能性は無きにしも非ずでしょう。
手首のケガから復帰したトッププレイヤーの前例
手首のケガ自体はテニスプレイヤー全体を通して多くみられるものですが、錦織と同じような境遇を辿った選手も存在します。
中でも有名なのが、アルゼンチン出身のファン・マルティン・デルポトロ(錦織と同年生まれ)。
若干20歳にしてグランドスラムである全米オープンを制覇。錦織と同じく、世界ランキング最高位4位まで昇りつめたこともあるプレーヤーで、強烈なフォアハンドを武器に「将来のNo,1候補」においてまさに筆頭と呼ばれる存在でした。
しかし、2010年に利き手の右手首をケガして手術。
更に2014年には反対側の左手首を負傷し、手術しました。
錦織の場合、現時点で手術という選択は取っていませんが、それでも同年生まれのトッププレイヤーであり、同じ箇所をケガしたデルポトロの境遇にはダブるものを感じずにはいられません。
ではそのデルポトロ、度重なる手首のけがを乗り切れたのでしょうか?
まず一度目の右手首のケガはおよそ4か月で復帰。その後再び休養期間を挟みはしましたが、翌2011年にはケガにより250位台まで落としたランキングを11位まで戻し、「ATPアワード・カムバック賞」を受賞する復活劇を遂げました。
しかし2014年、一度目とは反対側の左手首のケガでは、復帰までおよそ1年もの歳月を要することになります。更に復帰後は痛みが度々再発し、左手首の手術を実にトータル3度重ねることに…。
その間ランキングもあれよあれよと500位以下まで急降下し。一時は再起不可能とささやかれる時期もありました。
ところが2016年、デルポトロは一転して大活躍を見せます。
ロンドン五輪では銀メダルを獲得、他の大会でも強豪を次々と撃破し、現時点ではランキングを20位台まで戻すなど見事にトッププレイヤーとして帰ってきました。
デルポトロの例を見ると、「まだまだ錦織は終わっていない」と希望的観測を抱いても良いように思えてしまいます。
何度手術しても、何度も第一線に戻ってきたデルポトロ。
錦織も彼の前例に続けとばかりに、鮮烈なカムバックを願うばかりですね。
錦織の復帰時期は?2018全豪に間に合うか
デルポトロの前例を見ても分かる通り、復帰時期の予測は簡単ではありません。
再発の可能性もありますし、何よりテニスに直接的な影響を与える手首という箇所であるからこそ、ケガの治療、リハビリ、トレーニングなど複数のステップをクリアする必要があります。
また、今後の経過次第では手術に踏み切る可能性もゼロとは言えないでしょう。
そうなれば復帰が長引くどころか、かなり不透明な状況…いえ、選手生命そのものに関わる話となっても不思議ではない。
ただ、陣営のコメントを見る限りでは「2018年を見据えて」とのポジティブな心境が見て取れますので、ここはあえて悲観的にとらえる理由もありません。
あくまでケガは万全に治してから復帰すべきでしょうが、最短で2018年最初のグランドスラム「全豪オープン」にて、錦織が帰ってくる可能性もあります。
専門家の見解でも「最低3か月」はかかるとの声も出ているそうですので、今から全豪オープンだと4カ月強…。絶対に不可能とは言い切れないでしょう。
おわりに
スポーツにおいて、確かにケガをしないに越したことはないでしょう。
しかし、ケガを乗り越えて以前のように、更には以前以上に活躍したスポーツ選手が何人も存在するのもまた事実です。
錦織のケガによる長期休養についても充電期間、レベルアップするためトレーニング期間と考えれば、前向きにもとらえられます。
いずれにせよ、外から見守る私たちは錦織の無事と、そしていつの日か訪れる感動的なカムバックを願うしかありません。