ミリオンダラーベイビーのあらすじ
アメリカの中西部でトレイラーハウスに住むとても貧しい家族がいた。
家庭は崩壊状態であり、家族から愛情を受けたことのないマーガレット・フィッツジェラルド(マギー)は、プロボクサーとして成功し、自分の価値を証明するため、ロサンゼルスにある、フランキー・ダンのボクシングジムに入門した。
フランキー・ダンは、カットマンとして活躍した後、ジムを経営しながらトレーナーとして多くの優秀なボクサーを育て上げてきた。
しかし、不器用で説明不足なことからボクサーたちに逃げられ、その不器用さは家族にも波及し、娘のケイティとは音信不通だった。
フランキー・ダンが手塩にかけて育ててきたビッグ・ウィリーに逃げられたばかりの頃、マギーはジムへ入門したのだが、マギーのトレーラーになることを拒んでいた。
それでも毎日ジムに通い続けるマギーの姿に、コーチングを始め、練習を通じて二人の間に強い絆が生まれていく。
そして、マギーはフランキー・ダンの指導のもと、試合で勝ち続け評判になっていく。
監督:クリント・イーストウッド
制作年:2004年
制作国:アメリカ
ミリオンダラーベイビーの評価(感想・レビュー・口コミ)
すごくすごく、痛い作品です。大好きなんだけど、何度も観られない。それでもふと観返したときに、前とは違う発見があり、その深さにまた痛い思いをする、そんな映画です。
お話はわりとシンプルでスムーズにすすんでいくので、とても観やすいです。マギーとフランキー、二人の中心人物のことが丁寧に描かれているので、感情移入しやすく、どうしてこうなった、と混乱することもなく素直に楽しめました。
女ボクサーとしてのサクセスストーリーだったはずが、最後は尊厳死を問われるような内容になるなんて、最初に観たときには本当に衝撃だったんですが、マギーの飼っていた犬の話、あれは伏線だったんですよね。
展開にはびっくりするけど、無理がないことが、すごいと思います。
他にも色んな伏線が散りばめられていて、それが見事に回収されていくので、とても唸らせてくれました。
マギーとフランキーが二人でレモンパイを食べるシーン、大好きです。映画に限らず、食べ物が美味しそうにみえるシーンがある作品は良作が多い気がします。
最後に、二人を陰から見守るスクラップの存在。演じるモーガンフリーマンが最高です。
二人のこれまでの絆を見守ってきた彼の存在が、救いなんじゃないかなぁと思っています。
感動なんて生易しいものじゃなく、やっぱり痛い映画だけど、その痛みは誰でも人生の中で感じるものなはず。
だから、観てほしいです。
(31歳・男性)
賛否ある作品だと思います。
でも絶対見る価値のある映画です。
如何なる理由があろうと命は絶ってはいけないと思っていた自分の考えが、この映画を見終わった後、マギーに対して心が揺れました。
マギーは貧しい中でも強くたくましく生きてこられたのは、ボクシングという希望があったからだと思います。身体が動かなくなって希望を失ったマギーの気持ちを考えたら、マギーの選択が理解出来たからです。
自分の考えは綺麗事なのかと心は揺らいでも、マギーとフランキーのしたことは絶対してはいけないことです。
何であのラストじゃないといけなかったのか?
希望を失った人間の末路は死しかないのか?
決してそういうことではないと思います。
バッドエンドの中にいかに自分なりに希望を見つけるかが大事なんじゃないかと私は思いたいです。
見終わった後の衝撃は、考えさせるという意味では映画だからこそあのラストで良かったんだと思います。
賛否あっても、人の心を揺さぶる素晴らしい映画です。
(24歳・女性)
クリント・イーストウッドは大好きな監督で、ほとんどの作品を観ています。彼が監督して主演している映画「ミリオンダラーベイビー」は、女性ボクサーと老トレーナーの話です。
この映画は、胸が痛くなるような内容でした。ボクサーが出てくる映画というと「ロッキー」が有名ですが、「ロッキー」は成功物語です。
地道に努力を続けた男性が、ボクサーとして成功するという内容で、映画が終わった後は清々しく良い気分で映画館を出られる映画です。
しかし、「ミリオンダラーベイビー」は成功物語ではありません。重たい気分で映画館を出るような作品でした。
ヒラリー・スワンクが演じる若い女性マギーは、貧しい家の出で女性ボクサーになって成功することを夢見ています。家族も社会の底辺で暮らしています。
小さなボクシングジムを運営している老トレーナーのフランキーは、弟子入りしたいと志願するマギーに対して、初めは断ります。しかし、マギーの才能を見抜いた親友のアドバイスを受けてトレーナーになることを決意します。マギーはフランキーの指導によって強くなり、大きな大会にも出られるようになります。しかし、ある試合で体に大きなダメージを受けてしまいます。その後のマギーとフランキーの決断には賛否両論があります。私は、未だにフランキーの決断が良かったのかわかりません。
(27歳・男性)
観ていて「痛み」を感じた。「嫌な奴」がいっぱい出てくるし、陰鬱で後味が悪くて、なんかハリウッド映画っぽくないし、決して楽しいとは言えない映画だ。でも、これほど引き込まれて真剣に観た映画もとても珍しい。それはこの映画が「安楽死と尊厳死」という重いテーマに真っ向から向き合い、1人の女性の生と死を映画的なお約束や綺麗事を一切排してリアルに描き切ったからだろう。そういう意味で、やはりこの映画は深くておもしろい映画だと思う。少なくとも今の日本においては安楽死は認めないとする立場が正解であり常識だ。しかしこの映画を見て、もし自分の愛する人が「殺して」と言ってきた場合、それらの常識が果たして正解なのかどうか分からなくなってしまった。この映画は我々の持っている常識に揺さぶりをかける。それでいて決して答えを押し付けるのではなく我々に考えさてくれる。女性ボクサーとトレーナーの頑固オヤジの師弟愛を通じた成長譚という、ある意味ハリウッド映画の王道のストーリーを出発点にして、ここまでハリウッド映画っぽくない深い映画をつくりあげた本作は秀作だと言えるだろう。
(30歳・女性)
女性ボクサーとジムトレーナーの間の、甘い絡みもロマンチックなシーンも一切ない、純粋な愛がこの映画の見どころであり、最大の魅力です。ジムトレーナーはボクサーを徹底的に鍛えます。ボクサーはジムトレーナーの期待に徹底的に応えようとします。最後、ボクサーが自分の限界に達したとき、観客はボクサーとジムトレーナーの間の感動的な愛を目にすることになります。このときのジムトレーナーの行動が正しい振る舞いかはわかりません。私がボクサーの親友だとしたら、ジムトレーナーの行動を非難するかもしれません。ですが、それでもやはり、私はジムトレーナーの行動に並々ならぬ深さの愛を感じ、その振る舞いに心を動かされるのです。それは私たちに決して選べないような選択をできる、愛ゆえの勇気に憧れを感じるからなのかもしれません。
日常生活で命をかけるような愛に触れることはあまりないと思います。生活に刺激が欲しいときや心を動かされる体験がしたいとき、この映画をみることをおすすめします。
(44歳・男性)