世界ランキング通算在位週223週、歴代でも5位を誇るノバク・ジョコビッチ(セルビア)が、ケガにより2017年残りシーズン全ての試合欠場を発表しました。
一時は手の付けようがないほど無双状態を誇っていたジョコビッチですが、2016年終盤からは失速…。2017年のツアーも後半戦に突入し、ここからの巻き返しに注目される中での衝撃的なニュースです。
ケガの詳細や長期休養の狙い、また復帰時期はいつごろになるのかなど。
今回はジョコビッチを特集し、詳しく解説したいと思います。
ジョコビッチのケガに関する詳細
ケガや欠場理由については、ジョコビッチ自ら会見でおよそ40分にも渡り、説明を行いました。
その内容をまとめると以下の通りです。
・ケガの箇所は利き腕である右ひじ
・一年半あまり前から痛みには悩まされていた
・直近二カ月では状態が悪化するばかり
・複数名の医師に話を聞いた結果、残りシーズンはラケットを握らないことにした
・右ひじのケガはすぐに治る類のものでは無い
・手術の必要はないと考えている
・ある程度の休息を挟んだ後で様子を見る
・ケガの療養だけでなく、日々の生活や休息を楽しみたい
詳しく述べられているように見えますが、実は右ひじのケガの状態については全容が不透明な部分も多くあります。
また、具体的な治療法や今後のプランについても同様。手術は必要ないと言い切るあたりをみると、それほど重大なケガではないのかもしれません。
しかしながらデビスカップ(国別対抗戦)のセルビアチーム医師であるズデンコ・ミリンコビッチ氏の声明によると、ジョコビッチは骨挫傷を患っているとのこと。
これ以上悪化すれば手術の可能性も出てくるため、長期的な休養を氏も勧めていましたので、ツアーを回りながら回復、という選択はやはり難しいのでしょう。
※ただ骨挫傷は定義があいまいで、打撲の一種とも取れれば、骨折の一歩手前とも取れるためケガの度合いは未知数。
長期休養には別の狙いがある可能性も
実はジョコビッチについて、以前よりモチベーションの低下やメンタル面の不安が各所で取りざたされていました。
かねてからの悲願だったキャリア・グランドスラム(四大大会すべてを制覇)を2016年全仏オープン優勝にて達成。その頃より、無気力気味な様子が試合中などでも散見されていたのです。
大きな目標を達成したことによって引き起こる、いわゆる「燃え尽き症候群」のようなものでしょうか。
実際のところは本人や陣営にしか分かりませんが、事実2016年の全仏後より、ジョコビッチの無双ぶりは明らかになりを潜めていました。
2017年になってもその傾向は変わることはなく、全豪オープンにてノーシード選手に敗れるなど、グランドスラム・マスターズ1000ともに優勝なし。失速ぶりはより顕著になっていったと言わざるを得ません。
そんな中、シーズン後半戦を盛り上げる全米オープン前での長期休養発表です。
当然ケガが休養理由の一因ではあるのでしょうが、心身ともにリフレッシュし、モチベーション・ハングリー精神の向上なども狙いの一つである可能性は大いにあり得ます。
ジョコビッチはユニークな調整法で有名
休養理由にメンタル面回復の狙いがあるのでは?と予想したのは、何も感覚的な印象にとらわれた意見ではありません。
実は過去にも伸び悩んでいた時期にユニークな調整法を取り入れ、ジョコビッチは飛躍を遂げていたのです。
期待の若手として早くから活躍はしていたものの、2007年~2010年まで、4年間にも渡りナダル・フェデラーの壁に跳ね返され続け世界一が遠かったジョコビッチ。
後に自身でも語っていますが、2010年はプロになって最低の瞬間だったそうで、全豪オープンでは腹痛を起こして敗北という屈辱も味わいました。
普通ならこのような苦境に陥った際、鍛錬や努力を重ねて自分の腕を磨くことでしょう。力や技を競い合うスポーツ選手ならなおさらのこと。
しかし、ジョコビッチは違いました。
当然トレーニングは継続していたものの、「食事」に強く着目したのです。
不調の原因を食生活にまで広げ、あらゆる検査を実施。
その結果、小麦と乳製品に対して強い不耐症があると判明します。いわゆるグルテン(小麦などの穀物に含まれるたんぱく質)不耐症ですね。
結果を受けてジョコビッチはすぐに食生活を改善し、グルテンを抜くグルテンフリー食を徹底するのですが、驚くことにそこからわずか18カ月で悲願の世界No,1に辿り着いたのでした。
ちなみに、実はグルテン不耐症だったジョコビッチの実家は偶然にもピザ屋…。さすがにこれはもう皮肉と言うしかありません。
このように、自己の成長や調整法に関して独特の感性を持っているジョコビッチだからこそ、今回の長期休養についても別の狙いがあっても不思議ではないわけです。
ジョコビッチの復帰時期は?2018年シーズン頭からか
復帰時期に関してですが、実は本人の口から会見時に言及されていました。
「来年は最初の大会から出場する気でいる。
全豪オープンでは早い段階で上位シード選手に当たることを楽しみにしている。」
ジョコビッチ自身はあくまで休養は2017年シーズンだけ。2018年はシーズンスタートと同時に復帰したいと考えているようです。
このコメントを聞いても、やはりケガそのものへの不安はそれほど大きくないのでしょうか。長期休養にも関わらず、早い段階で復帰時期を本人が明言しているだけに、リフレッシュの意味も兼ねた休養の可能性は少なくないように思えます。
いずれにしても、ジョコビッチが自分にとってベストになると考えた上で下した判断なのでしょう。
長期休養の理由が何であれ、再び強くなって帰ってきたジョコビッチの姿を見られるのであれば、何も文句はありません。
おわりに
強いだけでなく、時に熱く、時にユニークな人柄でファンも多いジョコビッチ。
その姿を2017年はもう見られないかと思うと少しさびしくはありますが、きっとまた新たに生まれ変わって帰って来ることでしょう。
長期休養を経て、再びあの覇気溢れる“らしい姿”を私たちに見せて欲しいものです。