錦織圭の活躍により、日本でも注目を浴びるようになったテニス。
しかしテニスにあまり詳しくない人の中には、テニスの醍醐味や目の付けどころがイマイチ分からない…などと感じる人も少なくないでしょう。
そこで今回は、テニスを観戦する上でぜひ抑えておきたい知って得するポイントの中から、「代表的なテニスのプレースタイル」に関する基礎情報をまとめました。
知っておけば、今まで以上にテニスの新しい面白さに気づけるかもしれません。
オールラウンダー
テニスというスポーツは単純に分類すると、サーブ、ストローク(打ち合い)、ネットプレー(ネットぎわで相手の返球を即座に返す)の3つで構成されています。
オールラウンダーとは文字通り、この3つ全てをそつなくこなす「万能型」と考えてください。
どれかひとつに頼るのではなく、すべてを高い水準でこなすことにより、いかなる特徴を持つ相手であろうと得手不得手なく戦いやすくなるのがメリットです。
例えばストローク(打ち合い)のみに大きく特化した選手の場合、打ち合いになれば強いが、サーブに難がある為サーブを攻略されて苦しんでしまう、といったケースは実際によく見られます。
しかし、オールラウンダーは上記の例と異なり弱点らしい弱点が少ない為、対戦相手からすれば「ここだけ攻略すれば大丈夫」などと単純な戦略は立てにくくなるのです。
ただオールラウンダーと一口に言っても、サーブ、ストローク、ネットプレーそれぞれのクオリティがどれだけ高いかにより総合的な強さも左右されますので、一概に「オールラウンダー=最強」と言い切るわけにはいきません。
実際、サーブ、ストローク(打ち合い)、ネットプレーの全てを最高のクオリティで兼ね備える選手などほぼおらず、それを可能に出来るとしたら間違いなくその選手は絶対的な強さを誇ることになるでしょう。
オールラウンダーの中でもほんの一握り…。全てにおいて最高のクオリティを誇るロジャー・フェデラーは数少ないその中の一人です。
全てにおいてうまく、強く、そして美しい。
フェデラーはまさしく、テニスというスポーツにおける最高傑作だと言えるでしょう。
ネットプレーヤー
ネットプレーヤーのほとんどは、サーブ&ボレーを主体としたプレースタイルです。
つまり、サーブを打つ⇒相手を崩す⇒ネットに詰めてボレーで仕留める。
この一連の流れで自らのサービスゲームを進めていきます。
また、サーブ後にネットへ詰めるだけでなく、ストローク中であろうと少しでもチャンスがあると見るや、ネットへ詰めて積極的にボレーを狙うのが特徴です。
このプレースタイルはあくまでサーブが組み立ての主体(ビッグサーバー)となる以上、相対的に長身の選手が多くなります。
代表的な選手で言うと、イボ・カルロビッチ(身長211cm)、ジョン・イズナー(身長208 cm)など。
恵まれた長身を武器に強烈なサーブを打ち込み、相手にストロークへと持ち込ませる前にネットへ詰めてボレーなどで決めてしまうのです。
当然主体とするサーブだけでポイントを奪う場面も多く、現役最強ビッグサーバーのカルロビッチなどは年間で1318本(64試合)のサービスエースを決めるほど、サーブそのものの威力が他の選手とは比較になりません。同年の錦織がサービスエース286本(66試合)でしたから、どれだけカルロビッチのサーブが強力かは数字を見てもお分かり頂けるでしょう。
ここまでで分かる通り、ネットプレーヤーの特徴は何より「サーブの調子に左右されやすい」点。
サーブの調子が良くなければ、あっさりと簡単に破れてしまいますし(ネットプレーヤーはストロークが苦手な場合が多い)、逆にサーブが絶好調だと世界1位の選手ですら飲み込んでしまうこともあります。
プレースタイルの特徴が長所とも短所ともなり得る、ネットプレーヤーはまさしく諸刃の剣的なテニススタイルなのです。
ただ、予測ができないからこそ、時折り起こるネットプレーヤー達のどんでん返しに注目するのもテニス観戦を面白くするひとつのポイントと言えるでしょう。
カウンターパンチャー
読んで字のごとく、耐えて、凌いで、ズドンと仕留める。
これがカウンターパンチャーのプレースタイルです。
見る側としてもラリーが続きやすいため、見ごたえのあるプレースタイルと言えるかもしれません。
現役選手の中で典型的なカウンターパンチャーと言えば、やはり筆頭はラファエル・ナダルでしょう。
ストロークで振り回されようとも食らいつき、とにかくボールを拾いまくって、ひたすらチャンスを待つ。
そしてようやく巡ってきた甘いボールをハードヒット。
ナダルに代表されるように、カウンターパンチャーが本領を発揮すると、相手は心身ともに大きなダメージを食らいます。
打ち疲れ、走り疲れによる肉体的ダメージ。
優位に立っていた状況を一気にひっくり返される精神的ダメージ。
カウンターパンチャーの一撃を食らってしまうと、まさしく二倍のダメージがのしかかってくるのです。
とはいえこのカウンターパンチャー、誰でも会得できるものではありません。
様々なボールを返す技術、素早くコートを駆ける走力、返されたボールに瞬時に反応する瞬発力、スタミナ、精神力などなど…。
心・技・体全てがそろっていなければ、本物のカウンターパンチャーとは呼べません。
またカウンターパンチャー独特の難しさとして、「打てるのに打たない選択」を下せるかどうかも重要になります。
あくまで「カウンター」が武器である以上は、「ここで決める!」というボールが来るまではあえて我慢し攻めを控える忍耐力も必要なのです。
カウンターパンチャーの試合を観戦する際は、ぜひこの「我慢している場面」にも注目すると良いでしょう。
他のプレーヤーとのプレースタイルの違いをより一層際立って感じられるかもしれません。
アグレッシブ・べースライナー
べースライナーとはベースライン上でのストロークをメインに試合を組み立てる選手のこと。
更に「アグレッシブ」との言葉が示す通り、拾って凌ぐディフェンシブなスタイルを持ち味とするカウンターパンチャーと異なり、自ら仕掛けていくスタイルがアグレッシブ・べースライナーです。
シンプルに言えば、攻撃的に自ら打っていく選手だと考えてください。
このプレースタイルを得意とするのが、錦織圭です。
特に錦織の場合はボールの跳ね際を早いタイミングで叩く為、更に攻撃側に特化したアグレッシブベースライナーと言えるでしょう。
調子が良い時の錦織は相手の時間を奪い、その上で厳しいコースを突く攻撃的なショットを次々と繰り出すため、ノッてしまえばどんなプレーヤーでも手がつけられません。
2014年全米でのジョコビッチ、2016年全米でのマレー。当時最強と言われた二人をねじ伏せたこれらの試合も、まさに錦織の攻撃力が相手を飲み込んだ典型的パターンでした。
ただ、アグレッシブ・べースライナーは自ら仕掛けていくプレースタイルであるが故に、ストロークの調子が悪いと自分で自分の首を絞めかねません。
相手に攻められてポイントを失うのではなく、自らのミスでポイントを失い続けてしまうのです。
こうなると相手は危険を冒さず、ただ返球するところに集中すれば良い訳ですから、精神的にも楽になるでしょう。
実際、錦織も安定感に長けた選手ではありませんので、ストロークの不調が響き自滅パターンに陥るケースも少なくありません。
それでも他の選手に比べて「切り替える力が高い」為、苦しみながらも修正を加えつつ何とか勝ちをもぎとる試合が多いのはやはり流石です。
長らくトップ10という第一線で活躍し続けられているのは、このような「他の選手にはないストロングポイント」を持っているからなのでしょう。
ボールをどんどん打ち込み、相手をきりきり舞いさせるアグレッシブベースライナーの試合。観戦には特におすすめのプレースタイルですので、ぜひチェックしてみてください。
おわりに
個人競技であるテニスは、選手ごとのプレースタイルの違いに着目するのも観戦を楽しむ一つのポイントです。
プレースタイルごとの相性や面白さなど、ただ観るだけではなくテーマを持って観戦すれば更なるテニスの魅力に気づけることでしょう。
奥が深く、知れば知るほど興味をかきたてられるテニスの世界。
あなたもこれを機に、一歩足を踏み入れてみては?